新型出生前診断(NIPT)検査を受ける際の3つの大事な心構え

妊娠中の検査可能時期と中絶可能期間その他

元々のこのBLOGの主旨からずれますが、遺伝カウンセリングなどの枠組みができた今日でもNIPT検査を受けたは良いけどどうしたらいいか分からない、結果を受け止められないといった話を見聞きします。ウチでは第一子出産時にNIPT検査を受け、その際に関連書籍を読み漁ったり関連情報を集めたので、そこからの私の目線で大事な点をまとめてみたいと思います。

我が家の事例

紛れもない高齢出産に該当した我が家は今思うと血迷っていたのかもですが、NIPT検査を2回も受ました。1つは出産を請け負ってくれる病院で実施してくれたものです。こちらは国のガイドラインの枠内で行われているものです。2つ目はお金さえ払えば誰でも検査が受けられる八重洲のとある雑居ビル内クリニックで受けたものです。支払いは現金のみ、受付の女性は終始札束を数えており、中にいる夫婦は比較的若い男女が多く、ほとんどの人が手持ち無沙汰にスマフォをいじっていたのを覚えています。

新型出生前診断(NIPT)とは

出生前の読み方

  • しゅっせいぜん
  • しゅっしょうぜん
  • しゅっしょうまえ

のいずれかになるそうです。私は「しゅっしょうまえ」で読んでいます。

出生前診断とは

妊娠中の胎児に医学的な問題があるか調べる検査全般を指します。代表的なところでは超音波検査で従来からある羊水検査などもこれに含まれます。

新型出生前診断(NIPT)とは

まず新型出生前診断という呼称はマスコミがつくった造語なのだそうです。出生前診断の中で一番新しいからということでしょうか。どちらかと言うと併記されるNIPTが正しい名称で(non-invasing prenatal genetic testing の略です)そのまま直訳で無侵襲的出生前遺伝学的検査と訳されることが多いです。従来の羊水検査のように子宮に針を刺すといった侵襲的なことに行わずに血液検査のみで済むのでnon-invasing(無侵襲的)なのかと。書籍によっては母体血セルフリー胎児DNA検査としているものもありました。母親の血液から胎児由来のDNAを取得し検査うんぬんの部分はここでは割愛します。

NIPTで何がわかるのか?

胎児に次の3つの染色体異常があるかどうかがわかります。この中でも21トリソミー/ダウン症候群は新生児の先天異常の中でも割合が大きいので話題に上がることが多く、NIPT=ダウン症の検査と捉えられることも多いようです。また13トリソミーや18トリソミーは出生を乗り越えても1年以内に亡くなってしまう事が多いのもあると思われます。

検査概要異常時の呼称主な症状
21番染色体の本数ダウン症候群/21トリソミー知的障害や運動発達の遅れ、多種の合併症
13番染色体の本数パトウ症候群/13トリソミー胎児期からの成長や発達の遅れ、多種の合併症
18番染色体の本数エドワーズ症候群/18トリソミー胎児の発育不全、先天性心疾患や手首足首の形態異常
21, 13, 18トリソミーとその症状

日本国内で日本医学界が認めているNIPTにおいては上記3つの染色体の本数検査のみですが、その枠組の外で行われているNIPTにおいては1番から23番まで全ての染色体を検査対象にしたり、染色体の本数だけではなく、中の遺伝子の微小欠失確認なども含んでいるものもあります。ただ21, 13, 18トリソミー以外の染色体異常ではほとんど出生事例がないようなので、そこまで求める必要性は無いのではと個人的には考えます。

NIPT検査結果のサンプル

一部抜粋になりますがNIPT検査結果のサンプルを載せておきます。専門的な細かい注意書きはたくさんありますがメインの部分はどちらもシンプルで同じ事が記載されています。

NIPT検査結果 サンプル-1

NIPT検査結果のサンプル-1
NIPT検査結果のサンプル-1

NIPT検査結果 サンプル-2

NIPT検査結果のサンプル-2
NIPT検査結果のサンプル-2

妊婦の年齢とNIPT陽性的中率

まずNIPT陰性(問題はないケース)的中率ですが、妊婦の年齢に関わらずほぼ100%なのだそうです。結果が陰性であればその時点でNIPTについては安心して大丈夫と言えます。逆に陽性(胎児の染色体に問題があるケース)的中率ですが妊婦の年齢によって差があります。妊婦の年齢が若ければ若いほど陽性的中率は下がります。

  • 妊婦が40歳の場合・・・的中率90%以上
  • 妊婦が35歳の場合・・・的中率80%

妊婦さんの年齢によってはNIPTの結果が陽性で出てもそれが間違いである可能性が十分に残されているケースがあるということです。医療/検査機関では羊水検査を追加で実施してはっきりさせましょう、と案内してくるところが多いと思います。当てにならないなと感じる方もいるかもですが、NIPT以前の母体血清マーカーテストなどではこれよりももっと的中率が低いものとなります。

赤ちゃんの先天異常ってそれだけ?

各媒体でもNIPTが話題に上がることが多く、それにつられて赤ちゃんの異常が「ダウン症」だけのようなイメージを受けますがこれは間違いです。

  • 先天異常を持つ赤ちゃんが生まれる可能性は新生児全体の3〜5%
  • ダウン症を含む染色体以上はそのうちの1/4
  • もっとも多い心臓病関連で100人に1人
  • ダウン症候群は600人に1人

が具体的な先天異常の割合となります。3〜5%という数字が思ったよりも高く、赤ちゃんが五体満足で生まれてくるのが決して当たり前ではないという事実を認識しました。

先天異常の具体名としては心室中隔欠損、口唇・口蓋裂、動脈管開存などがあげられます。NIPTの結果が陽性で出た、子供がダウン症らしい、どうしよう。。という会話はしてももっと可能性の高いその他の先天異常が見つかったらどうするか、まで想定している方はなかなかいないのではないでしょうか。(例年どういった先天異常が確認されているかは横浜市立大学医学部産婦人科がとりまとめている先天異常データベースがあります。気になる方は見てみてください。)

妊娠継続を諦める場合のタイムリミット

妊娠中の検査可能期間と中絶可能期間
妊娠中の検査可能時期と中絶可能期間

本記事の冒頭にも置いたこちらのチャート。こうして並べるとまるで検査か中絶かの二択のようにも見え、自分でもショックでしたがこちらを使って説明していきます。

 初期中絶と中期中絶の違い

チャートにも記載したとおり、妊婦さん/お母さんへの負担が大きく異なります。中期中絶になった場合はその処置の重さや中絶したことを再認識させられる手続きなどもあり、精神的ストレスが後々まで残ることも考えられます。初期中絶か中期中絶かの二択だけで見ると、初期中絶で済むのが間違いなくベターと言えます。

NIPTが陽性になった→初期中絶が間に合うのか?

ウチはここまでの想定は出来ていませんでした。NIPT検査が受けられるのが妊娠10週目、初期中絶の期限が妊娠12週未満です。NIPTの検査結果が出るのに1週間はかかるので、結果を見てからほとんど考える間もないまま初期中絶という流れになってしまいます。よって妊娠継続を諦めた多くの人は羊水検査で陽性であることを確定した後に中期中絶という手段を取られているようです。

NIPT検査機関によっては陽性判定後の初期中絶も間に合います、と謳っているところもあるので陽性判定結果をどう受け止めるか固く決まっている方はそうした手段も選択肢の1つとしてあると言えます。

妊娠初期超音波検査の重要性

前項ではNIPT受ける→羊水検査で結果を確定させる→妊娠継続を決める、というちょっとありえない単純な図式になってしまいましたが実際にはそんなことはありません。そのその他の要素で私が一番重要と考えるのが「妊娠初期超音波検査」です。「胎児スクリーニング」や「胎児ドッグ」と表現されることも多く、ネット検索する際は「胎児ドッグ」が適しているかもしれません。

さて、この妊娠初期超音波検査の何が重要かですが、

  • 妊娠初期超音波検査では胎児の形態異常の有無からダウン症を含む幅広い先天異常を検知

があげられます。一般の妊婦健診でも超音波検査を行いますが妊娠初期の身体がつくられている途中の胎児の様子を精密に検査できる医師はまだまだ少なく、その専門医が時間をかけて行う検査は妊婦健診のそれと別物とも言えるようです。具体例は「胎児ドッグ + 妊婦健診 + 違い」などで検索してみてください。

胎児ドッグを売りにしていて、かつ妊娠初期も対応しているクリニックとなると数も限られ、地方の方は往来が大変になるかと思いますが、NIPTにお金をかける意思があるのであればこの妊娠初期超音波検査も合わせて行われることを強くおすすめします。「妊娠初期超音波検査 + 東京」や「胎児ドッグ + 東京」など地名を組み合わせて検索することでいくつかは見つけられると思います。

胎児超音波検査のサンプル

こちら今見ると専門用語の羅列で???になりますが、当時は時間をかけてじっくりエコーしてくださり、説明も毎回十二分に行っていただけました。

胎児超音波検査 サンプル-1

胎児超音波検査サンプル-1
胎児超音波検査サンプル-1

胎児超音波検査 サンプル-2

まとめ:3つの大事な心構え

これからNIPT検査を検討している方々に、上記の経験を通して私から次の3つを気にしたほうが良いのではというポイントをまとめました。

1. 方針を夫婦間で話し合っておく

NIPTで予期せぬ結果が出たらどうするのか?まずは羊水検査まで行って確定させるのか?さらにその後はどうするのか?などなどです。またダウン症以外の症状が出る可能性が出てきた場合も想定してネットで情報などを集めつつよく話あっておくことが大事だと思います。これから出産を控えている時期にこんなネガティブな話をするのは想像するだけで気が滅入りますが、妊婦さん(お母さん)の年齢が高ければ高いほど先天異常の率が高くなるのは事実なので目を背けずに話あっておくべきだと思います。

2. 妊娠初期超音波検査の受診

こちらは繰り返しになりますが、NIPTと合わせて妊娠初期超音波検査が行えるクリニックを探し受診すべきです。お金はかかりますが妊婦さん(お母さん)の年齢問わず出来れば全妊婦さんが受診すべきだと私は考えます。万が一お腹の赤ちゃんに異常があったとしても、早期の発見で様々な準備ができたり、専門医のアドバイスも受けられるからです。これも繰り返しになりますが、一般の妊婦健診ではこの専門クリニックレベルの検査やアドバイスを受けることはほぼ期待できないそうです。

3. 妊娠継続を諦める場合の医療機関探し

万が一もう諦めよう、となった場合は中絶手術となりますがその際の医療機関もあたりをつけておくべきかと思います。胎児ドッグやNIPT検索を請け負うクリニックは検査はするけど中絶手術まではやりません、というところが多いためです。病院/クリニックの選定の他、入院(中期中絶の場合)期間や費用、事後の行政手続きなどなど、これは可能な限り夫(旦那さん)にあたる人が確認しておくべき内容かと思います。縁起でも無い話ですが、高齢出産で高めのリスクを抱え、諦める諦めないの分解点について夫婦間で意見が合うことが間違いないのであればここまで備えておいても良いのかなと思います。

0 or 1 でロジカルに決められる話ではありませんが、上記の私の経験や考えのごく一部でもどなたかの参考になれば幸いです。

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